愛と憎とを命令されて行わないために、人生の短さを知ろう。

ハワイから東京へ帰国して、その寒さに驚くと同時に、人の多さと、行き交う人々のせわしなさがやたらと目につきました。逆に、ハワイののどかっぷりが異常なだけとも言えますが(TED流ハワイの楽しみ方 まとめ編)

それにしても東京は忙しいですね。仕事が多いのは良いことかもしれませんが、あまり行きすぎると大切なことを忘れてしまうのできをつけなければなりません。

周りにいませんか?忙しさ自慢をする人。「忙しい=重要な存在」という思い込みが、あっという間に大切な人生を奪い去って行くかもしれないというのに。

ともあれ、そんな忙しい我々現在人へ、はるか昔の遠い国からお手紙が届いています。ここで一部を紹介しておきましょう。

ルキウス・アンナエウス・セネカを読む

セネカは、激動のローマ帝政時代を政治家として生き抜いた人物です。あの暴君の代名詞としてしられるローマ皇帝ネロのブレーンとして長く仕えました。

その間に政治権力の中枢で繰り広げられたであろう、さまざまな陰謀や謀略をくぐり抜けながら皇帝ネロの良き時代とされる最初の5年間を支えました。

晩年はローマ帝国から得た財産をすべてネロ帝に返還して政治の世界から退こうとしますが、最後はネロ帝に謀反を疑われて、あえなく自殺させられます。

そんな苦労人のセネカによる言葉のひとつひとつは、我々現代人の心にも突き刺さるほどの普遍性を帯びています。あるいは、人間の営みが2,000年以上もの間なにも変わっていないとも言えるかもしれません。

何千年以上も続くこのせわしない人間ゲームも、そろそろ根本的変化を迎えてもいい頃かもしれません。AIの出現がその可能性を秘めていると言えますが、人々のマインドに根本的変革がないかぎり結果は同じなのかもしれません。

多忙の人は惨め

では忙しい我々現代人に送るセネカの言葉の一部を見てみましょう。

誰彼を問わず、およそ多忙の人の状態は惨めであるが、なかんずく最も惨めな者といえば、自分自身の用事でもないことに苦労したり、他人の眠りに合わせて眠ったり、他人の歩調に合わせて歩き回ったり、何よりもいちばん自由であるべき愛と憎とを命令されて行う者たちである。彼らが自分自身の人生のいかに短いかを知ろうと思うならば、自分だけの生活がいかに小さな部分でしかないかを考えさせるがよい。

出典:生の短さについて 他2篇 (岩波文庫) P.55

いきなり多忙の人の状態は惨めであると言い切っています。これはセネカ自身が政界の中枢で暴君ネロ帝に仕える中で、己自身に感じたことかもしれません。

会社組織などで生きて行く以上、自分自身の用事でないことに苦労したり、他人(上司や顧客)の歩調に合わせて歩き回ることはある程度避けられません。

しかし、このいちばん自由であるべき愛と憎とを命令されて行う者になってしまうのを許すわけにはいきませんよね。

かつて日本は大戦中、国によって何を憎むべきかを命令されて、ほぼ全国民がそれを実行しました。今もかたちを変えて、同じことが密かに行われているかもしれません。

忙しいの”忙”という時が、心を亡うと書くのはよく知られているところです。行き過ぎた忙しさは人から心を奪い、大切なもの(何を愛すべきか)をも簡単に見失なわせてしまうのです。

例えば、ニュースなどでよく報道される過労自殺などもそうです。あまりに多忙であると本来一番愛すべき自分自身とその人生をも顧みなくなるほどになってしまうのです。自殺する人に対して、死ぬくらいならなんでもできるでしょって言う人もいますが、忙しさというのは、常人では計り知れないほど人の心を狂わせてしまうのです。

人生の短さを知る

忙しさで心を失いかけた時に、まず思い出すべきなのは、セネカの言うように、我々の人生がいかに短いかということです。しかも人それぞれどれくらい長く生きられるのかは誰にもわかりません。

明日か、来年か、10年後か。結局先がわからない私たちには、今日という日を、また今という瞬間を最大限に生きるしかありません。人や世間がどう思うかばかり気にしたり、人の都合にばかり合わせて生きていては、いつのまにか自分自身の人生を生きることなく、時間だけが過ぎてゆきます。

また、日々の生活のために稼ぐのも大切ですが、あまりに多忙な毎日を過ごしていると、生きるために稼いでいるのか、稼ぐために生きているのかわからなくなります(資本主義とお金と投資)。

またいくら稼いでほしいものを得たとしても、それを維持するためにまた稼ぐ必要が出てきて、今度はその得たものに隷属させられる可能性もあります。所有していたと思っていたものに、いつのまにか所有されるというパラドクスが起きてしまうのです。

ということで、書店の平置きコーナーにあるような、流行りの「秒速で稼ぐ方法」みたいな即物的な本もいいですが、たまには何の役にも立たなさそうな古典を手にとって、じっくり思索する時間を持つというのも人生の豊かさのひとつとしておすすめしておきます。

それではまた。

時間であふれることこそ自由:世界一貧しい大統領ホセ・ムヒカ

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TE.D
昭和末期生産型AI投資家。ロスジェネ最後の生き残り。30代で結果的に実質セミリタイア。最近はハワイ東京間を行ったり来たり。映画「キャスト・アウェイ」のトム・ハンクスのごとく、このネット大海原の無人島にて一人つぶやいてます。 穏やかで自由かつ豊かな次世代の都心ライフスタイルを模索しながら、日々のささいな経験や気づき、オススメ情報を中心に発信します。

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