あえて今、アル・パチーノの魅力を映画『セント・オブ・ウーマン』でお伝えしたい

以前紹介したApple TVのアマゾンプライムビデオ(記事はこちら:故スティーブ・ジョブズ氏に捧ぐ、TEDのおすすめアップル製品5選)でいろいろ映画を探していたら、なんとあの映画「セント・オブ・ウーマン/夢の香り」がプライムビデオになってるじゃないですか。

すごいね、こんな名作までほぼ無料で見られる時代がくるとは。そして、また見てしまいました、多分もう5回目くらいです。。

そのくらい映画「セント・オブ・ウーマン (Scent Of a Woman) 」は私のベスト映画のかなりの上位に位置するおすすめ映画です。

今日はその魅力を次の観点からお伝えするので、よければ是非アマゾンビデオなりDVD等で見てみてくださいね。(なるべくネタバレのないように書きましたが、多少はご了承ください。)

アル・パチーノが渋すぎる!

この映画の主演は言わずと知れた名優、アル・パチーノ。映画「ゴッドファーザー」シリーズで、マイケル・コルレオーネ役を務めるほか、数々の名作に出演している彼ですが、実はこの「セント・オブ・ウーマン」で初めてアカデミー賞主演男優賞に輝いたのは意外に知られていません。

この映画の主演は当初ジャック・ニコルソンにオファーされてたんですが、彼が脚本を読んで出演を断ったそうな。ジャック・ニコルソンも好きな俳優の一人ですが、結果的にはアル・パチーノのほうが断然この役に合っています。

本作でアル・パチーノは、盲人の退役軍人を演じるのですが、この演技が本当にすごい。本当に見えてない!ように見えます。

終始焦点が一切合っていませんし、まばたきもしません。本人がこの役になりきりすぎて、撮影中の転倒シーンで本当に失明しかけたというエピソードがあるくらいです。

そしてこのアル・パチーノ扮する退役軍人フランク・スレード中佐がまたいいキャラしてるんですよ。

誰彼かまわず悪態をつき、酒、フェラーリ、美女が大好きのやりたい放題。なんだこのクズオヤジって思って見てたら、実はおちゃめで繊細でユーモアに溢れ、どこか憎めないキャラに次第に魅了されます。

世代を超えた友情が熱すぎる!

この映画のメインテーマは、年の離れた男と男の友情です。

金持ちの子息が集まる名門高校にて一人奨学金で苦学するチャーリーが、ある日、盲目退役軍人のお世話というアルバイトに応募することから2人の出会いが始まります。

チャーリーは学校でのクラスメートが起こしたある事件を目撃してしまい、校長からその事件の首謀者を教えることを条件に、ハーバード大学への進学を約束されます。

チャーリーはクラスメートを売って約束された将来を買うか、黙秘を続けて退学に追い込まれるかの窮地に。

フランクは人生の辛酸を嘗め尽くした経験から、チャーリーに見たことをすべて喋るようにすすめるが、チャーリーは頑なに拒もうとします。

フランクは次第にこの少年の高潔さに信頼を寄せると同時に、その生き方がチャーリーに茨の道を進ませるであろうことから、まるで息子の将来を案じるかのような心境になっていきます。

作中ではフランク・スレードの軍人時代に何があったかの多くは語られていませんが、彼は中佐から将軍への昇進を何度も見送られたことがわかっています。

それがスレードの甥の口からは、上司にいちいち楯突いて悪態をついたからだと言われていますし、本人も自分が偉く感じたいがために、あらゆることに反抗したとも言っています。

しかし、作中の彼の性格を鑑みるとそれだけだとは言えないことが伝わってきます。おそらく、軍隊組織や上司の汚いやり方などに反抗したために昇格を逃したという見方もできます。

実際彼の言動から、当時フランクの下で働いていたであろう兵士たちへの敬意や思いやりが伝わってきます。

部下を守るために、戦場では敵と戦い、軍隊組織においては上司と戦うという側面もあったのだろうことが推察できます。

つまり、あまり説明されていないフランクの過去を推察することで、このフランクのチャーリーに対する複雑な感情が読み取れ、さらにこの物語を面白くしているのです。

もし、フランクが軍隊組織で仲間を売るような汚いやり方で中佐までのし上がった過去があるとすれば、チャーリーに対しては、単純に自分のようにならないよう、高潔さを守ってほしいとなるわけです。

一方、フランクが軍隊組織での歪んだやり方にノーを言い続けて昇進ができず、今の惨めな自分になったと思っているのなら、チャーリーにはもっと要領よく世間を泳いで楽な人生を歩めとアドバイスをしているわけです。

このフランクのどちらともとれる微妙な感情をアル・パチーノは見事に演じています。フランクとチャーリーがフェラーリに乗った後、心身ともに疲れ果てたフランクにチャーリーが言います。

Charlie: Colonel, are you looking at me?

そしてフランクが答える。

Frank: I’m blind, Charlie.

こういった少ない言葉のやり取りにもいろんな意味や感情が込められていて、何度見てもあきません。

セリフがオシャレすぎる!

この映画には、数々の名言があるので、その幾つかを紹介しましょう。

just tango on

フランクとチャーリーがレストランで、一人の美しい女性(ガブリエル・アンウォー)に話かけ、フランクがその女性にタンゴをその場で教えましょう、と言います。

それに対して、まだタンゴ初心者の女性は、「ステップを間違うのがこわいわ」と言って躊躇します。そこでのフランクの返しがこれ。

“No mistakes in the tango, darling, not like life. It’s simple. That’s what makes the tango so great. If you make a mistake, get all tangled up, just tango on.”

人生と違ってタンゴに失敗はないよ。とてもシンプルさ。それがタンゴのいいところなんだよ。たとえ間違ってもたついても、ただ踊り続ければいいのさ。

– translated by TE.D

女性をダンスに誘う時こんなかっこいいセリフを言ってみたいものですね。まぁ、一生ないと思いますが。。そもそもタンゴすら踊れないし(笑)。

この時の女性役のガブリエル・アンウォーは本当に美しいです。当時はポスト・オードリー・ヘップバーンの呼び声も高かったはずですが、チャーリー役のクリス・オドネル同様、最近はあまり見なくなったので残念です。

さてそれはともかく、tangoとtangled(もたつく)はその音で韻を踏んでおり、tango onはgo on(続ける)をもじったフランクの造語で、これもtangoにかかっています。

へたなおっさんがいったら、ドン引きレベルのオヤジギャグです。。しかし、これをフランク(というかアル・パチーノ)が言うと、渋い、かっこいい!となる不思議。

There is nothing like the sight of an amputated spirit.

最後のクライマックスシーンで、フランクが窮地に陥ったチャーリーを救うべく行った即興のスピーチでの一言。

このスピーチは本当によくできてます。英語のスピーチには意味がわからなくても、聞き入ってしまうものがたくさんあります。

有名なキング牧師のI have a dreamスピーチやオバマ元大統領のスピーチ、スティーブ・ジョブズのスタンフォード大学卒業式でのスピーチなどもそうです。

英語は日本語と違って、発音自体に破裂音が多く、どこか日本語にはない、ある種ラップやパーカッションのようなリズムや音楽性がもともと備わっています。

There was a time I could see. And I have seen. Boys like these, younger than these. Their arms torn out, their legs ripped off. But there is nothing like the sight of an amputated spirit. There’s no prostetic for that.

私にも見える時はあった。そしてこの目で見てきたのだ。ここにいる者たちよりも若い兵士たちが、(戦場で)腕をもぎとられ、足をひきちぎられるのを。しかし、切断された魂をみるほど酷いものはない。切断された魂に義足はつかないのだから。

– translated by TE.D

切断された魂に義足はつかない。心にしみます。出世、成功、お金、もの、すべて大事かもしれませんが、やっぱり心を一番大切にしたいですね

Woo-ah!

これは、驚いた時などにフランクが使う、口癖みたいなものですが、状況とフランクの感情によっていろんなパターンがあって、それに注目するだけでも面白いと思います。しかし最後のクライマックスのWoo-Ah!がやっぱり一番いい。

このWoo-Ah!という言葉、アルパチーノが役作りのために銃の扱い方を本物の軍人さんに教えてもらった際、その軍人さんがアルパチーノがうまくできた時に使っていた軍人特有の掛け声なんだそうです。それを実際の映画でも採用したとのこと。

最後は爽快&穏やか

最後はフランクの魂の叫びにより窮地を脱したチャーリーは見事この一件から解放され、またフランクには知的で美しい女性との新たな出会いが訪れます。この終わりかたも清々しいというか、なんとも言えない穏やかさの中で幕を閉じます。

まだまだ紹介したい名場面もあるのですが、少し長くなったので、また思い出したら追記します。

ついでに今さらながら、ゴッド・ファーザーもおすすめしときます。若きパチーノ、中年のパチーノ、初老のパチーノ、それぞれを楽しめますよ。


それではまた。

オススメ映画を紹介している記事はこちら:

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昭和末期生産型AI投資家。ロスジェネ最後の生き残り。30代で結果的に実質セミリタイア。最近はハワイ東京間を行ったり来たり。映画「キャスト・アウェイ」のトム・ハンクスのごとく、このネット大海原の無人島にて一人つぶやいてます。 穏やかで自由かつ豊かな次世代の都心ライフスタイルを模索しながら、日々のささいな経験や気づき、オススメ情報を中心に発信します。

5件のコメント

  1. 私はつい先週この映画を見てタンゴのシーンに感動しました。名優アルパチーノとはいえ、何か裏話があるだろうと思い探ってみたらこのブログに行き当たりました。この文章の投稿日が2018年であるのにも驚きました。読ませていただいてありがとう。私はしばらくアルパチーノとクリスオドネルの映画を見続けたいと思います。

    1. 大矢さん、こちらこそわざわざコメントまでいただきありがとうございます!何回みてもいいですよね、タンゴのシーン。ちなみに、撮影裏話の情報はこのサイト(英語ですが)にもわかりやすくまとめられています。よければ参考になさってください。

      15 Facts About ‘Scent of a Woman’

  2. 面白い記事を教えていただいてありがとうございます。本日の通勤の往復ともこの記事を読みふけっておりました。チャーリーは黒人だったほうがこの映画が良くなっただろうという、あるコメディアンの意見には首をひねりました。なぜならフランクは良くも悪くも美しいもの、完璧なものが好きな人ですから。。。クリスがマットデイモンに脚本を見せなかったというエピソードとクリスとアルパチーノをなるべく離しておこうという作戦が成功しなかったというエピソードには、ものすごく興奮しました。おっしゃる通りこの映画、何回も見てしまいます。この二人にほれ込んで、現在インサイダー、ジャスティス、三銃士、ラブアンドウォーを中古の安いもので注文中です。たのしみです。どうかほかの素晴らしい映画についても、お時間のある時にブログでコメントを下さいますよう。また私が英語を誤訳して理解しておりましたらどうかお許しください。

    1. 純粋すぎるほどの真面目な青年を描くならマット・デイモンよりクリス・オドネルのほうが断然いいですよね。もしチャーリーを黒人にするとアメリカだとどうしても差別という別の大きなテーマが入ってきてしまうかもしれませんね。結果論ですが、ジョージ役のフィリップ・シーモア・ホフマンにしても、キャスティングが絶妙だったと思います。ブログはマイペースにやってるので、更新も遅いですが、今後もオススメの映画などあれば紹介していきますね。

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