その値下げ、ちょっと待ってください!

なんらかのビジネスをご自身でされている方なら、必ずどこかで直面するのが、価格設定(Pricing)ですよね?それがモノを売る場合であっても、サービス業であっても、価格設定は非常に重要で、それがビジネスの方向性を左右すると言っても過言ではありません。

この価格設定というのは本当に面白いもので、お金の価値というものが人々の共同幻想で成り立っているため、なにが本当に正しい価格かは誰に言えません。投資に少しでも関わっていれば、価格というものの相対性や不確実性がよく分かるはずです(参考:資本主義とお金と投資)。

ここで少し、簡単な例で考えてみましょう。

最近はサラリーマン大家さんなる言葉があるぐらい、不動産投資への敷居が低くなり、このアベノミクス相場の影響も相まって、不動産が再びホットな話題となっているので、不動産の例でみてみましょう。

あなたがとあるアパートAのオーナーだとします。

アパートA
取得価格:1億円
部屋数:5部屋
各部屋の家賃:10万円
年間家賃収入:600万
利回り:6%

アパート自体はごくごく平凡で、利回りも市場の平均のものとしましょう。

ここで5部屋のうち3部屋が空室になってしまったとしましょう。5部屋のうち3部屋が空室なら結構焦りますよね?

で、この状況でいち早く集客しようとする場合に、最初に頭に思い浮かぶ集客方法はなんでしょうか?

もしここで、家賃の値下げが第一に浮かんだ方はちょっと危険なので、ここは少し冷静に考えてみましょう。

安易に値下げするのは、いかなるビジネスにおいても非常に危険です。

この例で見てみましょう。もし、あなたが集客のために現在の家賃を10万円から9万5千円に下げるとしましょう。10万円うちわずか5千円なら問題ないだろうと思われるかもしれませんが、これを同じ利回りで、アパートの価値を割りもどしてみましょう。

(95,000 × 5 × 12)/0.06 = 95,000,000 (9千5百万)

となります。たった五千円の値引きで、あなたの資産(ビジネス)価値のうち500万が瞬時に吹っ飛んでしまいました。

この例では1億円規模ですが、ビジネス規模が大きくなればなるほど、価格のビジネス全体への影響はより大きくなります。

価格弾力性を知ろう

せっかく家賃を減額したのにまったく状況が変わらなかったらもう最悪です。値下げするのは簡単ですが、値上げするとなるとそれ相応の理由が求められます。

この価格の上げ下げに対して需要がどれだけ変わるかというのを数値化したものを、一般的に価格弾力性と言います。難しそうな言葉はここではおいといて、大事なのは、

提供する商品やサービスの価格に対して、お客さんがどれだけ敏感に反応するのかというのを知っておくことが価格設定には欠かせないということです。

たとえばこの例だと、もし家賃を5,000円下げた途端に、入居者が殺到するのであれば(価格弾力性が大きい)、それは価格を下げる意味もあるでしょう。でも家賃10万が9万5千円になったところで、入居候補者の心がそれほど動かされるでしょうか?

怪しいところですよね?

不動産は日用品のような消耗品とは違って、あまり値引きが需要に直結しない傾向にあります(価格の弾力性が小さい)。これにはスイッチング・コストの話も関わってきます。スイッチング・コストとは、お客さんが商品やサービスを乗り換える際に掛かるコストのとことです。

この例で言えば、入居候補者に掛かるコストは、引っ越し費用や敷金礼金など、今住んでいるとこから引っ越すのに掛かる費用です。また生活環境そのものも変わるため、精神的な負担も見えないコストになるでしょう。

そういうわけで、不動産はその性質上価格の弾力性が小さいと言えます。最近スマホの他社からの乗り換え時の費用を全額負担します、なんてサービスが普通になっていますが、あれはまさにこの顧客のスイッチングコストを実質0にして、価格の弾力性を大きくしようという試みなのです。

値下げの前に資産価値向上を

さて最初の例に戻りましょう。ではビジネスにおいて、値下げを考えるまえにやるべきことはなんでしょうか?それは、その資産価値(ビジネス)の向上を目指すということになります。

上の例だと、例えば、Wi-Fiを全部屋無料にするなどです。当然その分コストが掛かりますが、同じ10万円の家賃でかたやWi-Fiなし、かたや無料でついてくると言われれば、入居候補者の心も動かされるかもしれません。

無料Wi-Fiなら1つ設置するだけで全部屋分をカバーできるでしょうから、部屋毎のコストは毎月1,000円程度でしょう。意味なく5,000円値引きするより、よっぽど安上がりでかつ資産価値も向上します、さらにそのコストは経費として計上できます。

というわけで、ビジネスにおいての価格設定時は、値下げを考える前にできることがないかを一番に考えるが重要です。

逆に言えば、値下げというのは、もうやれることがなくなってお手上げ状態で行われる最終手段(リーサル・ウェポン)なのです。

消費者側の視点に立てば、なんとなく安いからSaleでいつも買っているものは、もう誰も見向きもしなかった、どうしようもないダメダメ商品ということでもあります。ですので、本当にそのSale品が”お買い得”なのか、よくよく吟味しておきたいですね。

簡単ですが、今回はこの辺で。

それではまた。

TED

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TE.D
昭和末期生産型AI投資家。ロスジェネ最後の生き残り。30代で結果的に実質セミリタイア。最近はハワイ東京間を行ったり来たり。映画「キャスト・アウェイ」のトム・ハンクスのごとく、このネット大海原の無人島にて一人つぶやいてます。 穏やかで自由かつ豊かな次世代の都心ライフスタイルを模索しながら、日々のささいな経験や気づき、オススメ情報を中心に発信します。

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